小さな体からはとても想像できないような、何メールもある大きな作品を発表し続けている書家、浅田聖子。
学校の体育館の端から端まで紙を広げ、手も脚も墨だらけになりながら全身で筆を操っていく制作風景は血気盛んで、見るものを魅了します。

日常生活にある、感動する言葉を“書”にし、「“書”を通して元気や癒しを届けたい」という思いと使命感を持って発表し続ける浅田氏。
浅田聖子先生が昨年2012年の近作書展で発表された作品を一部ご紹介いたします。

【プロフィール】
1949年生。東京都出身。母親が書家だったため、4歳から筆持ちはじめ、書の道へ。1965年故益田霞邨に師事。1971年故駒井鷲静に師事。 毎日書道展, 日書展など受賞多数。現在、商品パッケージや題字なども含め積極的に活動中。
毎日書道展審査会員。日本詩文書作家協会評議員。日本書道美術院評議員。光荘会幹事。雅涎会会員。

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「新しいものは常に謀叛だ」徳富蘆花“謀叛論”より

「やはり”ことば”に共感致しました。

何か冒険的な新しいことをしますと、必ず一部から批判を受ける
ということがあり、本当にこのことば通りですね。
この”ことば”と出逢った時、すぐに作品にしたいなと思いました。
横6メートル近くあるのですが、比較的スンナリと仕上げることができました。」(浅田氏公式ホームページより)

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「坐断」禅語

「『坐断』は、禅語で 余分なものは切る というような意味ですが、
意味よりも 金文で造形的な面白さを表現する ということに重点を置きました。
金文の「糸」の部分の「○」を書くのがなぜか大好きです。
淡墨で力強く書くという難しさに閉口しました。
紙は中国の古い”ほう古箋”を使用しました。」

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「見るもよし 見ざるもよし されど我は咲くなり」武者小路実篤の詩

「見るもよし 見ざるもよし されど我は咲くなり」武者小路実篤の詩

「なぜ書を書くのか」ということについて、
浅田氏は公式ホームページで次のように語っています。

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なぜ、“書”を書くのかと聞かれたなら
「感動する言葉に出会ったからーー」、とこたえます。
書籍はもちろん新聞や雑誌、テレビやラジオ、あるいは町中で見かける文字情報など、日常生活の中にある、感動する言葉を“書”にしています。

そして二十歳、駒井鵞静先生の『原爆許すまじ』という作品に出会ったことが、私の書の世界を大きく拓く転機となりました。
それまでは古典である臨書にひたむきに取り組む日々でしたが、現代文が人の心に大きな感動をもたらす作品となることということに気付きました。
さりげない日常のなかで感動したひとつの言葉を“書”に表す。
生き方と作品とが結びついた私にとっての新しい書の世界が拓けたのです。
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「もしかしたら にんげんがえらいのは
かなしくても つらくても しにたくても
いきているからかもしれない
いしはなくだろうか てつはなくだろうか
ほうせきはなくだろうか ぼくたちはなく
つらくて つらくてなく こえをころしてなく
こえをあげてなく でもぼくたちはいきていく
つらさをかかえながら
かなしみをだきしめながら
そんなぼくたちをみて
だれかがいっているようなきがする
がんばれ がんばれ
ぼくたちは いきているだけで
きっとえらいのだとおもう
かなしみを こらえていきているのだから
おいおいなきながら いきているのだから
それだけでじゅうぶんに」

内田麟太郎の詩「ぼくたちは」より

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「“阿”によるMOVE」

「この作品は、最初「阿吽」と書いていたのですが、
「吽」がどうしてもうまくいかず、
「吽」を切って「阿」だけにしました。
私の所属する会の夏の錬成会で書き上げ、
体育館の2階からこの作品を見ましたところ、
「阿」の終筆が モゾモゾと芋虫が動くように見えたものですから「阿によるMOVE」と名付けました。」

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「捉えようも 掴みようもない宇宙

「捉えようも 掴みようもない宇宙
そして 空 星 闇 これを広大無辺というのか
それを見つめる私のなんと小さなことか」
大山行男“日本人の心の山 Mt.Fuji”より

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「海よ 僕らの使ふ文字では お前の中に母がゐる
そして母よ 仏蘭西人の言葉では あなたの中に海がある」
三好達治“郷愁”より

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「いまを大事に いまを愛して生きているのが
過去をつくり 未来をつくる
何かを目標にしているわけではありません
大震災でなおさらそう思いました」
“ラ・マンチャの男”を1200回演じた松本幸四郎さんのことば

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「生まれかわっても また あなたと出逢いたい」 自作

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「クソ真面目に生きたい
バカ正直に生きたい」 自作

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「人間は 瞬間 瞬間に いのちを
捨てるために 生きている」岡本太郎のことば

2012年9月11日(火)~16日(日)に銀座清月堂画廊で開催された、浅田聖子近作書展「ことば・感動を書に」から、ご本人の許可を得てご紹介させていただきました。

浅田先生の今後の出品書展情報はこちらから
http://seiko-asada.com/exhibition

書道教室の案内はこちらからご覧ください。
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